[トピック]土地再評価法にかかる会計・税務処理の疑問点

注:このページは会計・税務実務上の専門的な内容となっております。また各項目の詳細な説明は省略しておりますのでにとぞご了承ください。

0.はじめに

改正土地再評価法(土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律)とは、平成10年に交付された土地再評価法を改正したものです。改正前と異なり、一定の条件を満たす一般事業会社についても再評価が利用可能となっています。

具体的には、評価差益部分(税効果部分を除く)を資本準備金として取扱い、この差益部分を自己株式の償却に限定して使用を認めるという内容となっております。この法律は平成13年3月30日までの時限立法であり(*)、配当可能利益等の計算においては再評価差額金を控除することとなっています。

(*)再改正により、この期限が1年と1日延長され、平成14年3月31日までとなっています。また同時に、適用対象法人の範囲について「証券取引法に基づき公認会計士監査が義務付けられているが商法上の大会社に該当しない会社」が追加されています。

なお、この改正土地再評価法についての会計上の取扱いは、日本公認会計士協会リサーチ・センター審理ニュースNo.9(平成11年4月19日)において発表されています。今回のコラムもこの取り扱いを参考に作成しています。

ところが、この法律に従った再評価を行った後、再評価の対象となった土地の売却が発生した場合、その会計及び税務処理にいくつか疑問が浮かびました。以下、その疑問と結論についての仮説、当事務所の現状の取り扱いを説明します。

このコラムについて何かご意見がございましたら、お手数ではございますが左のボタンにより表示される質問フォームか事務所のメールアドレスまでご連絡くださいますようお願い申し上げます。

1.会計処理

再評価時点において、

  • 帳簿価額:100
  • 時価  :150

となっている土地があるものとします。

この場合、改正土地再評価法に従えば、以下のような仕訳となります(実効税率を40%とします)。

(借) 土   地

50

(貸) 繰延税金負債(負債の部)

20

        再評価差額金(資本の部)

30

利益処分計算書を経由せずに資本の部に再評価差額金が計上される点においては、新金融商品会計におけるその他有価証券の資本直入法と同一です。但し、改正土地再評価法の場合、その他有価証券の時価評価差額と違って期首における戻入は行われません。なお、上記の繰延税金負債は、他の繰延税金負債と区分して計上することが要請されています。

この差額は土地に係る評価差損益ですので、法人税法上は課税の対象とはなりません。しかし、この差額は所得に影響しない(損益計算書を経由しない)ため、税務上の調整は必要無いものとされています。この時点で、会計上の土地簿価は150、税務上の土地簿価が100となり、会計・税務の間に差額が発生します。税効果部分が計上されるのはこれが理由です(日本の税効果会計が資産負債法を採用しているため)

では、この土地を170で売却した場合にはどのような仕訳となるでしょうか。これを上記の審理ニュースNo.9に従って処理すると、下記の通りの仕訳となります。

(借) 現金預金

170

(貸) 土   地

150

        土地売却益

20

  繰延税金負債

20

  法人税等調整額(PL)

20

  再評価差額金

30

  再評価差額金取崩額

30

2.税務処理

さて、このままの土地売却益を課税所得としますと、課税されていない評価差額の部分だけが税務上過小となってしまいます。このため、何らかの形でこの部分を課税所得に加算する必要が出てきます。ここで、上記の「再評価差額金取崩額」を「損益計算書項目」として扱うか、「利益処分項目」として扱うかが問題となります。

損益計算書項目として扱った場合、上で述べたような加算は既になされていますので、申告調整は必要ありません。しかし、利益処分項目で取り扱う場合は、税務調整(具体的には別表4で加算)を行う必要があります。

私がこれまで見た事例のいくつかは、「資本の部に計上された項目を取り崩す」形式を重視して利益処分項目として取り扱うケースがほとんどでした。また、最近公表されました雑誌においても、利益処分項目としての取り扱いが例示されています。

さて利益処分項目として取り扱った場合には、上記の通り税務調整が必須となります。ところが、この場合の加算項目を「流出項目」として扱うと、利益積立金項目に矛盾が発生します。そうかといって「留保項目」として扱うと、利益積立金の項目に同じ金額が計上され、このまま永久に残ることとなります(取引の元となった土地が既に外部に売却されているため)。

3.解決法とあるべき処理について

これらを検討した結果、当事務所は現時点においては以下の通りの解釈を持って実務上の取り扱いをとしています。

  • 再評価差額金取崩額の加算は絶対に必要→別表4にて加算
  • 別表4上は留保項目で処理、別表5(1)において、利益積立金の「増」として処理
  • 利益積立金上残存する矛盾を解決するため、同時に、別表5(1)において貸借逆の同額を「当期利益処分による増減」欄に記入

これは単につじつまを合わせるための方策ではなく、

(税務上も会計上も)利益処分によらず積み立てられていた土地再評価差額金を利益処分により取り戻したことから、(少なくとも税務上は)当該部分について行われるべきであった利益処分を実施した

との考え方によるものです。

私自身は、本来この売却による戻し入れは、本来「損益計算書項目」として取り扱うべきと考えます。なぜなら、損益計算書項目として扱わなければ、再評価事業年度以降における会計上の土地の売却損益計上額がゆがめられる結果となるためです。